【歳時記・秋】 初嵐 はつあらし
初嵐 はつあらし
〈傍題〉
秋の初風 あきのはつかぜ ・ はた嵐 はたあらし
台風到来の前、陰暦7月末から8月半ば頃までに強く吹く風をいう。
〈比較〉
【歳時記・秋】 秋風 あきかぜ
【歳時記・秋】 野分 のわき
【歳時記・秋】 台風 たいふう
〈例句〉
古屋根や猫のつま音初あらし 不卜
(ふるやねや ねこのつまおと はつあらし)
初嵐して二三人帰りゆく 素十
(はつあらし してにさんにん かへりゆく)
日を拝む蜑のふるへや初嵐 嵐雪
(ひををがむ あまのふるへや はつあらし)
足の出る夜着の裾より初嵐 寅彦
(あしのでる よぎのすそより はつあらし)
棚ふくべ現れ出でぬ初嵐 虚子
(たなふくべ あらはれいでぬ はつあらし)
空をとぶ鴉いびつや初嵐 虚子
(そらをとぶ からすいびつや はつあらし)
蘭の葉のとがりし先を初嵐 荷風
(らんのはの とがりしさきを はつあらし)
はつ嵐真帆の茜に凪ぎにけり 蛇笏
(はつあらし まほのあかねに なぎにけり)
巨濤砕けて残る水泡や初嵐 石鼎
(きよたうくだけて のこるみなわや はつあらし)
ひるがへり雀白しや初あらし 青邨
(ひるがへり すずめしろしや はつあらし)
戸を博つて落ちし簾や初嵐 かな女
(とをうつて おちしすだれや はつあらし)
はつあらし佐渡より味噌のとどきけり 万太郎
(はつあらし さどよりみその とどきけり)
高黍の門辺に立てば初嵐 風生
(たかきびの かどべにたてば はつあらし)
初あらしあまたの崎へ波を刷く 秋櫻子
(はつあらし あまたのさきへ なみをはく)
初あらし鷹を入江に吹き落す 秋櫻子
(はつあらし たかをいりえに ふきおとす)
〈参考資料〉
・山本健吉 『山本健吉 基本季語五〇〇選』 講談社
・飯田龍太、稲畑汀子ほか 『カラー版 新日本大歳時記 愛蔵版』 講談社
・稲畑汀子 『ホトトギス新歳時記 第三版』 三省堂
・飯田蛇笏、富安風生ほか 『平凡社俳句歳時記 秋』 平凡社
・茨木和生、宇多喜代子ほか 『新版 角川俳句大歳時記 秋』 KADOKAWA