【歳時記・秋】 野分 のわき

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野分 のわき

〈傍題〉

野わけ のわけ ・ 野分だつ のわきだつ ・ 野分波 のわきなみ ・ 野分雲 のわきぐも ・ 野分跡 のわきあと ・ 野分晴 のわきばれ ・ 夕野分 ゆうのわき(ゆふのわき)

秋の野、草木を分けて吹く強風・暴風、疾風。主に台風をさす。

〈比較〉

【歳時記・秋】 秋風 あきかぜ
【歳時記・秋】 初嵐 はつあらし
【歳時記・秋】 台風 たいふう

〈例句〉

芭蕉野分して盥に雨を聞く夜かな 芭蕉
(ばせうのわきして たらひにあめを きくよかな)

猪もともに吹るる野分かな 芭蕉
(ゐのししも ともにふかるる のわきかな)

鷲の子や野分にふとる有磯海 去来
(わしのこや のわきにふとる ありそうみ)

顔出せば闇の野分の木の葉かな 太祇
(かほだせば やみののわきの このはかな)

一番に案山子をこかす野分かな 許六
(いちばんに かかし(かがし)をこかす のわきかな)

小原女や野分にむかふかかへ帯 園女
(をはらめや のわきにむかふ かかへおび)

見に行くや野分のあとの百花園 子規
(みにいくや のわきのあとの ひやくくわゑん)

大いなるものが過ぎ行く野分かな 虚子
(おほいなる ものがすぎゆく のわきかな)

鶏の空時つくる野分かな 虚子
(にはとりの そらどきつくる のわきかな)

野分して芭蕉は窓を平手打つ 茅舎
(のわきして ばせうはまどを ひらてうつ)

人ひとり入れてしまりぬ野分の戸 たかし
(ひとひとり いれてしまりぬ のわきのと)

拡声機遠き野分の音漏らす 楸邨
(くわくせいき とほきのわきの おともらす)

死ねば野分生きてゐしかば争へり 楸邨
(しねばのわき いきてゐしかば あらそへり)

道艶にして山へ入る野分後 湘子
(みちゑんにして やまへいる のわきあと)

濁流を一本とほす野分晴れ 弘美
(だくりうを いつぽんとほす のわきばれ)

〈参考資料〉

・山本健吉 『山本健吉 基本季語五〇〇選』 講談社
・飯田龍太、稲畑汀子ほか 『カラー版 新日本大歳時記 愛蔵版』 講談社
・稲畑汀子 『ホトトギス新歳時記 第三版』 三省堂
・飯田蛇笏、富安風生ほか 『平凡社俳句歳時記 秋』 平凡社
・茨木和生、宇多喜代子ほか 『新版 角川俳句大歳時記 秋』 KADOKAWA

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