【歳時記・冬】 冬めく ふゆめく
冬めく ふゆめく
〈傍題〉
なし
まだすっかり冬になったわけではないが、目に映る風物・万象がいかにも冬らしくなってくること。
〈比較〉
〈例句〉
口に袖あててゆく人冬めける 虚子
(くちにそで あててゆくひと ふゆめける)
欠航といふも冬めくもののうち 素十
(けつかうといふも ふゆめくもののうち)
冬めくや引き捨てて積む葡萄蔓 月草
(ふゆめくや ひきすててつむ ぶだうつる)
冬めくや土竜の土の新しく 紅雨
(ふゆめくや もぐらのつちの あたらしく)
好日のつづきながらも冬めきぬ 稲生
(かうじつの つづきながらも ふゆめきぬ)
冬めく夜鯉の輪切りの甘煮かな 林火
(ふゆめくよ こひのわぎりの あまにかな)
冬めくや幹のうしろに幹の見え 紘文
(ふゆめくや みきのうしろに みきのみえ)
冬めくや正倉院展終へし奈良 小夜
(ふゆめくや しやうさうゐんてん をへしなら)
〈参考資料〉
・飯田龍太、稲畑汀子ほか 『カラー版 新日本大歳時記 愛蔵版』 講談社
・稲畑汀子 『ホトトギス新歳時記 第三版』 三省堂
・飯田蛇笏、富安風生ほか 『平凡社俳句歳時記 冬』 平凡社
・平井照敏編 『新歳時記 冬 軽装版』 河出書房新社