【歳時記・秋】 月 つき
月 つき
〈傍題〉
上弦 じょうげん(じやうげん) ・ 下弦 かげん/げげん ・ 弓張月 ゆみはりづき ・ 片割月 かたわれづき ・ 弦月 げんげつ ・ 半月 はんげつ ・ 月の舟 つきのふね ・ 上り月 のぼりづき ・ 下り月 くだりづき ・ 三日月 みかづき ・ 四日月 よっかづき ・ 五日月 いつかづき ・ 八日月 ようかづき(やうかづき) ・ 十日月 とおかづき(とをかづき) ・ 二十日月 はつかづき ・ 月更く つきふく ・ 月上る つきのぼる ・ 遅月 おそづき ・ 残る月 のこるつき ・ 月傾く つきかたむく ・ 月落つ つきおつ ・ 月の秋 つきのあき ・ 姮娥 こうが ・ 月の桂 つきのかつら ・ 桂男 かつらおとこ(かつらをとこ) ・ 小愛男 ささらえおとこ(ささらえをとこ) ・ 月読男 つきよみおとこ(つきよみをとこ) ・ 月夜見男 つきよみおとこ(つきよみをとこ) ・ 月人男 つきびとおとこ(つきびとをとこ) ・ 月の兎 つきのうさぎ ・ 玉兎 ぎょくと ・ 銀兎 ぎんと ・ 兎魂 とこん ・ 玄兎 げんと ・ 銀蟾 ぎんせん ・ 玉蟾 ぎょくせん ・ 蟾兎 せんこ ・ 蟾魄 せんぱく ・ 蟾盤 せんばん ・ 皓魂 かはく ・ 月の蛙 つきのかえる(つきのかへる) ・ 嫦娥 じょうが(じやうが) ・ 孀娥 そうが(さうが) ・ 月の鼠 つきのねずみ ・ 月の都 つきのみやこ ・ 月宮殿 げっきゅうでん ・ 盃の光 さかずきのひかり(さかづきのひかり) ・ 月の雪 つきのゆき ・ 月の氷 つきのこほり ・ 月の鏡 つきのかがみ ・ 月の顔 つきのかんばせ ・ 心の月 こころのつき ・ 胸の月 むねのつき ・ 真如の月 しんにょのつき ・ 袖の月 そでのつき ・ 朝月 あさづき ・ 暁月夜 あかつきづくよ ・ 有明 ありあけ ・ 有明月 ありあけづき ・ 曙の月 あけぼののつき ・ 夕月 ゆうづき(ゆふづき) ・ 夕月夜 ゆうづきよ(ふゆづきよ) ・ 宵月 よいづき(よひづき) ・ 宵月夜 よいづきよ(よひづきよ) ・ 月の出潮 つきのでしお(つきのでしほ) ・ 月待ち つきまち ・ 昼の月 ひるのつき ・ 薄月 うすづき ・ 夜半の月 よわのつき(よはのつき) ・ 月の蝕 つきのしょく ・ 月の暈 つきのかさ ・ 月の隈 つきのくま ・ 月の輪 つきのわ ・ 月の出 つきので ・ 月の入 つきのいり ・ いるさの月 いるさのつき ・ 月渡る つきわたる ・ 秋の月 あきのつき ・ 月夜 つきよ ・ 月代 つきしろ ・ 月白 つきしろ ・ 月光 げっこう(げつくわう) ・ 月明 げつめい ・ 月影 つきかげ ・ 月暗し つきくらし ・ 月の闇 つきのやみ ・ 月下 げっか ・ 氷輪 ひょうりん ・ 氷鏡 ひょうきょう(ひようきやう) ・ 水精 すいせい ・ 玉魂 ぎょくこん ・ 玉輪 ぎょくりん ・ 玉盤 ぎょくばん ・ 玉鏡 ぎょくきょう(ぎよくきやう) ・ 金精 きんせい ・ 金盆 きんぼん・ 金魄 きんぱく ・ 金丸 きんがん(きんぐわん) ・ 月球 げっきゅう(げつきう)
連俳の五つの景物(雪、月、花、紅葉、時鳥)のうち、春の「花」に次いで重要な季語とされる。
〈比較〉
〈例句〉
月影を汲みこぼしけり手水鉢 親重
(つきかげを くみこぼしけり てうづばち)
芋を煮る鍋の中まで月夜かな 許六
(いもをにる なべのなかまで つきよかな)
鎖あけて月さし入れよ浮御堂 芭蕉
(じやうあけて つきさしいれよ うきみだう)
月はやし梢は雨を待ちながら 芭蕉
(つきはやし こずゑはあめを まちながら)
声かれて猿の歯白し峯の月 其角
(こゑかれて さるのはしろし みねのつき)
われをつれて我影帰る月夜かな 素堂
(われをつれて わがかげかへる つきよかな)
望汐や月の中行く帆かけ舟 蓼太
(もちしほや つきのなかゆく ほかけぶね)
月天心貧しき町を通りけり 蕪村
(つきてんしん まずしきまちを とほりけり)
月の根岸闇の谷中や別れ道 子規
(つきのねぎし やみのやなかや わかれみち)
清閑にあれば月出づおのづから 虚子
(せいかんに あればつきいづ おのづから)
須く月の一句の主たれ 虚子
(すべからく つきのいつくの あるじたれ)
酒なくて詩なくて月の静かさよ 漱石
(さけなくて しなくてつきの しづかさよ)
月光をふるはす桐の虫一つ 蛇笏
(げつくわうを ふるはすきりの むしひとつ)
山畑に月すさまじくなりにけり 石鼎
(やまはたに つきすさまじく なりにけり)
月光にぶつかつて行く山路かな 水巴
(げつくわうに ぶつかつてゆく やまじかな)
月を待つ情は人を待つ情 青邨
(つきをまつ なさけはひとを まつなさけ)
月明や山彦湖をかへし来る 秋櫻子
(げつめいや やまびこうみを かへしくる)
この月を居待寝待と指を折り 素十
(このつきを ゐまちねまちと ゆびをおり)
よよよよと月の光は机下に来ぬ 茅舎
(よよよよと つきのひかりは きかにきぬ)
父がつけしわが名立子や月を仰ぐ 立子
(ちちがつけし わがなたつこや つきをあふぐ)
森を出て花嫁来るよ月の道 茅舎
(もりをでて はなよめくるよ つきのみち)
ほつと月がある東京に来てゐる 山頭火
(ほつとつきがある とうきやうにきてゐる)
灯を消すや心崖なす月の前 楸邨
(ひをけすや こころがけなす つきのまへ)
母逝きしのちの肌着の月明り 龍太
(ははゆきし のちのはだぎの つきあかり)
月明の一痕としてわが歩む 湘子
(げつめいの いつこんとして わがあゆむ)
月の波消え月の波生まれつつ 汀子
(つきのなみ きえつきのなみ うまれつつ)
〈参考資料〉
・山本健吉 『山本健吉 基本季語五〇〇選』 講談社
・飯田龍太、稲畑汀子ほか 『カラー版 新日本大歳時記 愛蔵版』 講談社
・稲畑汀子 『ホトトギス新歳時記 第三版』 三省堂
・飯田蛇笏、富安風生ほか 『平凡社俳句歳時記 秋』 平凡社
・茨木和生、宇多喜代子ほか 『新版 角川俳句大歳時記 秋』 KADOKAWA