【歳時記・春】 花 はな

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花 はな

〈傍題〉

春の花 はるのはな ・ 春花 はるばな ・ 花時 はなどき ・ 花の雲 はなのくも ・ 花房 はなぶさ ・ 花片 はなびら ・ 花の姿 はなのすがた ・ 花の香 はなのか ・ 花の輪 はなのわ ・ 花の友 はなのとも ・ 花の主 はなのあるじ ・ 花守 はなもり ・ 花盗人 はなぬすびと ・ 花笠 はながさ ・ 花の山 はなのやま ・ 花の庭 はなのにわ(はなのには) ・ 花の門 はなのもん ・ 花の都 はなのみやこ ・ 花明り はなあかり ・ 花盛り はなざかり ・ 花便り はなだより ・ 花の雨 はなのあめ ・ 花冷 はなびえ ・ 花の露 はなのつゆ ・ 花朧 はなおぼろ ・ 花の陰 はなのかげ ・ 花影 かえい(くわえい) ・ 花の奥 はなのおく ・ 花の名残 はなのなごり ・ 花を惜しむ はなをおしむ(はなををしむ) ・ 花の錦 はなのにしき ・ 花の色 はなのいろ ・ 徒花 あだばな ・ 花月夜 はなづきよ ・ 花の粧い はなのよそおい(はなのよそほひ) 

俳句で「花」といえば桜をさす。咲き誇る美しさや華やかさだけではなく、散り行く無常さ、脆さ、頼りなさなども象徴する、大きな季語。雪月花といえば四季を代表する景物で、、花、さらに時鳥紅葉を加えて五つの景物といわれる。

〈比較〉

【歳時記・春】 桜 さくら
【歳時記・春】 初花 はつはな
【歳時記・春】 落花 らっか(らくくわ)
【歳時記・春】 残花 ざんか(ざんくわ)
【歳時記・春】 花見 はなみ

【歳時記・夏】 お花畠・お花畑 おはなばたけ

【歳時記・秋】 花野 はなの
【歳時記・秋】 花畑・花園 はなばたけ・はなぞの

〈例句〉

花の雲鐘は上野か浅草か 芭蕉
(はなのくも かねはうへのか あさくさか)

しばらくは花の上なる月夜かな 芭蕉
(しばらくは はなのうへなる つきよかな)

花の香や嵯峨の灯火さゆる時 蕪村
(はなのかや さがのともしび さゆるとき)

肌のよき石にねむらん花の山 路通
(はだのよき いしにねむらん はなのやま)

散る花のぱつぱと春はなくなりぬ 一茶
(ちるはなの ぱつぱとはるは なくなりぬ)

花散つて水は南に流れけり 子規
(はなちつて みづはみなみに ながれけり)

咲き満ちてこぼるる花もなかりけり 虚子
(さきみちて こぼるるはなも なかりけり)

花の月全島死するごとくなり 蛇笏
(はなのつき ぜんたうしする ごとくなり)

花影婆裟と踏むべくありぬ岨の月 石鼎
(はなかげばさと ふむべくありぬ そばのつき)

花の奥鐘の響を撞きにけり 茅舎
(はなのおく かねのひびきを つきにけり)

行厨の人参紅し花吹雪 風生
(かうちゆうの にんじんあかし はなふぶき)

墓原をかくして花のさかりかな 万太郎
(はかはらを かくしてはなの さかりかな)

病み呆けてふと死を見たり花の昼 木歩
(やみほけて ふとしをみたり はなのひる)

花万朶さゆらぎもなく蔵すもの 青邨
(はなばんだ さゆらぎもなく ざうすもの)

チチポポと鼓打たうよ花月夜 たかし
(ちちぽぽと つづみうたうよ はなづきよ)

花明しわが死の際は誰がゐむ 敦
(はなあかし わがしのきはは だれがゐむ)

人体冷えて東北白い花盛り 兜太
(じんたいひえて とうほくしろい はなざかり)

身をよぎるもの散る花とその影と 朱鳥
(みをよぎるもの ちるはなと そのかげと)

花しづめきれざる闇も吉野山 汀子

(はなしづめきれざるやみも よしのやま)


〈参考資料〉

・山本健吉 『山本健吉 基本季語五〇〇選』 講談社
・飯田龍太、稲畑汀子ほか 『カラー版 新日本大歳時記 愛蔵版』 講談社
・稲畑汀子 『ホトトギス新歳時記 第三版』 三省堂
・飯田蛇笏、富安風生ほか 『平凡社俳句歳時記 春』 平凡社
・茨木和生、宇多喜代子ほか 『新版 角川俳句大歳時記 春』 KADOKAWA

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