【歳時記・秋】 花野 はなの
花野 はなの
〈傍題〉
花野原 はなのはら ・ 花野道 はなのみち ・ 花野風 はなのかぜ
秋の草花が咲き乱れている、人の手が入っていない野原。
〈比較〉
【歳時記・秋】 草の花 くさのはな
【歳時記・秋】 花畑・花園 はなばたけ・はなぞの
〈例句〉
広道へ出て日の高き花野かな 蕪村
(ひろみちへ でてひのたかき はなのかな)
山臥の火を切りこぼす花野かな 野坡
(やまぶしの ひをきりこぼす はなのかな)
吹き消したやうに日暮るる花野かな 一茶
(ふきけした やうにひくるる はなのかな)
極楽に行く人送る花野かな 荷風
(ごくらくに ゆくひとおくる はなのかな)
芒谷下りて果てなき花野かな 碧梧桐
(すすきだに おりてはてなき はなのかな)
朝かげに立つや花野の濃きところ 石鼎
(あさかげに たつやはなのの こきところ)
東に日の沈みゐる花野かな 虚子
(ひんがしに ひのしづみゐる はなのかな)
大空のきはみと合ひし花野かな 青畝
(おほぞらの きはみとあひし はなのかな)
今日の日を穂高にのこす花野かな 青畝
(けふのひを ほたかにのこす はなのかな)
友情をこころに午後の花野径 蛇笏
(いうじやうを こころにごごの はなのみち)
別れ惜し花野に渡る風見つつ 立子
(わかれをし はなのにわたる かぜみつつ)
満目の花野ゆき花すこし摘む 登四郎
(まんもくの はなのゆきはな すこしつむ)
火の阿蘇に幻日かかる花野かな 朱鳥
(ひのあそに げんじつかかる はなのかな)
別れの一歩花野溢れて楽のごとし 楸邨
(わかれのいつぽ はなのあふれて がくのごとし)
昼は日を夜は月をあげ大花野 狩行
(ひるはひを よはつきをあげ おほはなの)
皆花野来しとまなざし語りをり 汀子
(みなはなの きしとまなざし かたりをり)
〈参考資料〉
・山本健吉 『山本健吉 基本季語五〇〇選』 講談社
・飯田龍太、稲畑汀子ほか 『カラー版 新日本大歳時記 愛蔵版』 講談社
・稲畑汀子 『ホトトギス新歳時記 第三版』 三省堂
・飯田蛇笏、富安風生ほか 『平凡社俳句歳時記 秋』 平凡社
・茨木和生、宇多喜代子ほか 『新版 角川俳句大歳時記 秋』 KADOKAWA