【歳時記・夏】 夜の秋 よるのあき
夜の秋 よるのあき
〈傍題〉
夜の秋 よのあき
夏の終わり、夜が秋らしくなってくることをいう。
現代では秋の季語「秋の夜」とは区別され、夏の季語として定着。
〈比較〉
〈例句〉
涼しさの肌に手を置き夜の秋 虚子
(すずしさの はだにてをおき よるのあき)
粥すする杣が胃の腑や夜の秋 石鼎
(かゆすする そまがゐのふや よるのあき)
客になる堅き畳や夜の秋 喜舟
(きやくになる かたきたたみや よるのあき)
西鶴の女みな死ぬ夜の秋 かな女
(さいかくの をんなみなしぬ よるのあき)
濤ごゑに消ゆるひとごゑ夜の秋 舟月
(なみごゑに きゆるひとごゑ よるのあき)
幼子のいつか手を曳き夜の秋 龍太
(をさなごの いつかてをひき よるのあき)
まろび寝の小さき母や夜の秋 蓼汀
(まろびねの ちひさきははや よるのあき)
灯の下の波がひらりと夜の秋 龍太
(ひのしたの なみがひらりと よるのあき)
頬落ちて狐顔せり夜の秋 秩父
(ほほおちて きつねがほせり よるのあき)
夜の秋の投げ出す足裏闇に向く 林火
(よのあきの なげだすあうら やみにむく)
水芸の茫々たりや夜の秋 聞石
(みづげいの ばうばうたりや よるのあき)
海わたる魂ひとつ夜の秋 信子
(うみわたる たましひひとつ よるのあき)
〈参考資料〉
・山本健吉 『山本健吉 基本季語五〇〇選』 講談社
・飯田龍太、稲畑汀子ほか 『カラー版 新日本大歳時記 愛蔵版』 講談社
・稲畑汀子 『ホトトギス新歳時記 第三版』 三省堂
・飯田蛇笏、富安風生ほか 『平凡社俳句歳時記 夏』 平凡社
・茨木和生、宇多喜代子ほか 『新版 角川俳句大歳時記 夏』 KADOKAWA