【歳時記・秋】 法師蟬 ほうしぜみ(ほふしぜみ)
法師蟬 ほうしぜみ(ほふしぜみ)
〈傍題〉
寒蟬 かんせん ・ つくつく法師 つくつくぼうし(つくつくぼふし) ・ つくしこいし(つくしこひし) ・ つくつくし ・くつくつぼうし(くつくつぼふし) ・ くつくつほうし(くつくつほふし) ・ おしいつく
「つくつくぼうし」は、漢字2字表記あり(虫偏に召、虫偏に尞)。名は鳴き声からきている。「寒蟬」は中国からの名。涼しくなってから鳴く蟬とされていた。
〈比較〉
〈例句〉
今尽きる秋をつくづくぼふしかな 一茶
(いまつきる あきをつくつくぼふしかな)
秋風にふえてはへるや法師蟬 虚子
(あきかぜに ふえてはへるや ほふしぜみ)
鳴き立ててつくつく法師死ぬる日ぞ 漱石
(なきたてて つくつくぼふし しぬるひぞ)
法師蟬煮炊といふも二人きり 風生
(ほふしぜみ にたきといふも ふたりきり)
また微熱つくつく法師もう黙れ 茅舎
(またびねつ つくつくぼふし もうだまれ)
うちまもる母のまろ寝や法師蟬 不器男
(うちまもる ははのまろねや ほふしぜみ)
大寺に又くりかへす法師蟬 誓子
(おほでらに またくりかへす ほふしぜみ)
法師蟬妻なき子なきときはなき 友次郎
(ほふしぜみ つまなきこなき ときはなき)
享保よりねむる羅漢に法師蟬 楸邨
(きやうほより ねむるらかんに ほふしぜみ)
城山が透く法師蟬の声の網 三鬼
(しろやまがすく ほふしぜみの こゑのあみ)
法師蟬朝より飢のいきいきと 波郷
(ほふしぜみ あさよりうゑの いきいきと)
鳴き終るときの確かに法師蟬 汀子
(なきをはる ときのたしかに ほふしぜみ)
〈参考資料〉
・山本健吉 『山本健吉 基本季語五〇〇選』 講談社
・飯田龍太、稲畑汀子ほか 『カラー版 新日本大歳時記 愛蔵版』 講談社
・稲畑汀子 『ホトトギス新歳時記 第三版』 三省堂
・飯田蛇笏、富安風生ほか 『平凡社俳句歳時記 秋』 平凡社
・茨木和生、宇多喜代子ほか 『新版 角川俳句大歳時記 秋』 KADOKAWA