【歳時記・夏】 納涼 すずみ
納涼 すずみ
〈傍題〉
涼む すずむ ・ 門涼み かどすずみ ・ 橋涼み はしすずみ ・ 縁涼み えんすずみ ・ 土手涼み どてすずみ ・ 磯涼み いそすずみ ・ 朝涼み あさすずみ ・ 夕涼み ゆうすずみ(ゆふすずみ) ・ 宵涼み よいすずみ(よひすずみ) ・ 涼み台 すずみだい ・ 涼み茶屋 すずみちゃや ・ 舟涼み ふねすずみ ・ 納涼船/納涼舟 のうりょうせん(なふりやうせん) /すずみぶね ・ 納涼 のうりょう(なふりやう)
夏の暑さを逃れて、戸外、縁や門先、水辺や橋の上などに涼を求めること。
海や川に船を出したり、縁側や土手などに「涼み台」を持ち出して、涼を楽しむ。
平安時代から、「納涼」「涼み」は漢詩や和歌の題として用いられてきたという。
人が涼をとる季語・季題のうち「避暑」は高原や海辺などへ遠出をすることをいい、「納涼」はより身近なところで行うとされる。
〈比較〉
【歳時記・夏】 涼し すずし
【歳時記・夏】 端居 はしい(はしゐ)
【歳時記・夏】 避暑 ひしょ
【歳時記・夏】 川床 かわゆか
〈例句〉
川風や薄柿着たる夕涼み 芭蕉
(かはかぜや かきうすきたる ゆふすずみ)
命なりわづかの笠の下涼み 芭蕉
(いのちなり わづかのかさの したすずみ)
更くる夜を隣にならふ涼みかな 去来
(ふくるよを となりにならふ すずみかな)
突つ立てて帆になる袖や涼み舟 丈草
(つつたてて ほになるそでや すずみぶね)
竹に寝てすべり落ちばや夕涼み 支考
(たけにねて すべりおちばや ゆふすずみ)
水音に濡れては帰る夕すずみ 千代女
(みづおとに ぬれてはかへる ゆふすずみ)
我が影を浅瀬に踏みてすずみかな 蕪村
(わがかげを あさせにふみて すずみかな)
琴の手は横に流るるすずみかな 麦水
(ことのては よこにながるる すずみかな)
蜀黍のもとにかたらふすずみかな 白雄
(たうきみの もとにかたらふ すずみかな)
涼み居て闇に髪干す女かな 召波
(すずみゐて やみにかみほす をんなかな)
とし寄の多さよ木曾の夕すずみ 士朗
(としよりのおほさよ きその ゆふすずみ)
松嶋の闇を見てゐる涼みかな 子規
(まつしまの やみをみてゐる すずみかな)
古井戸に物の音聞く夕すずみ 虚子
(ふるゐどに もののおときく ゆふすずみ)
ことづけの念おしに来る涼みかな 万太郎
(ことづけの ねんおしにくる すずみかな)
海鳴りに涼み将棋の影二つ 舜花
(うみなりにすずみ しやうぎの かげふたつ)
涼み舟洲に乗り上げし真暗がり 秋櫻子
(すずみぶね すにのりあげし まくらがり)
夕づつの嶺にふれゐる納涼かな 櫻坡子
(ゆふづつの みねにふれゐる すずみかな)
くらきより波寄せて来る浜納涼 亜浪
(くらきより なみよせてくる はますずみ)
門涼みかかる夜更けに旅の人 素十
(かどすずみ かかるよふけに たびのひと)
誘ひ立つ涼み床几の舞子たち 夜半
(さそひたつ すずみしやうぎの まひこたち)
こころいま世になきごとく涼みゐる 龍太
(こころいま よになきごとく すずみいる)
橋の名に涼み提灯かざしみる 晴子
(はしのなにすずみ ちやうちん かざしみる)
橋涼み話を川に落しをり 泰
(はしすずみ はなしをかはに おとしをり)
栓抜のどこにもかかり涼み船 勝彦
(せんぬきの どこにもかかり すずみぶね)
納涼の義太夫かたり乗せし舟 汀子
(なふりやうの ぎだゆうかたり のせしふね)
〈参考資料〉
・山本健吉 『山本健吉 基本季語五〇〇選』 講談社
・飯田龍太、稲畑汀子ほか 『カラー版 新日本大歳時記 愛蔵版』 講談社
・稲畑汀子 『ホトトギス新歳時記 第三版』 三省堂
・飯田蛇笏、富安風生ほか 『平凡社俳句歳時記 夏』 平凡社
・茨木和生、宇多喜代子ほか 『新版 角川俳句大歳時記 夏』 KADOKAWA