【歳時記・夏】 さくらんぼ
さくらんぼ
〈傍題〉
桜桃の実 おうとうのみ(あうたうのみ) ・ 桜桃 おうとう(あうたう) ・ チェリー ちぇりー
バラ科の落葉高木。食用になるのは一般に「西洋実桜」の実。
山形県をはじめとする東北地方や信州地方が、産地としてよく知られる。
日本には明治初年に入ってきて、その後改良されて佐藤錦やナポレオンといった品種が生み出された。
これらに先駆けて、米国産のブラック・タータリアンといった品種が市場に出回る。
生食のほか、等級や着色率によって缶詰などへの加工も行われる。
〈比較〉
【歳時記・春】 桜桃の花 おうとうのはな(あうたうのはな)
〈例句〉
茎宇右往左往菓子器のさくらんぼ 虚子
(くきうわうさわう かしきの さくらんぼ)
さくらんぼと平仮名書けてさくらんぼ 風生
(さくらんぼと ひらがなかけて さくらんぼ)
一つづつ灯を受け止めてさくらんぼ 暮石
(ひとつづつ ひをうけとめて さくらんぼ)
桜桃の百顆に百の雨雫 力
(あうたうの ひやくくわにひやくの あましづく)
舌に載せてさくらんぼうを愛しけり 草城
(したにのせて さくらんばうを あいしけり)
一粒にゆきわたる紅さくらんぼ 敬子
(ひとつぶに ゆきわたるべに さくらんぼ)
さくらんぼ母郷の冷えを宿したり 鉄之介
(さくらんぼ ぼきやうのひえを やどしたり)
さくらんぼさざめきながら量らるる 櫻桃子
(さくらんぼ さざめきながら はからるる)
雑兵のごとし吉野のさくらん坊 蓼花
(ざふひやうのごとし よしのの さくらんばう)
幸せのぎゆうぎゆう詰めやさくらんぼ 麻紀
(しあはせの ぎゆうぎゆうづめや さくらんぼ)
〈参考資料〉
・飯田龍太、稲畑汀子ほか 『カラー版 新日本大歳時記 愛蔵版』 講談社
・稲畑汀子 『ホトトギス新歳時記 第三版』 三省堂
・飯田蛇笏、富安風生ほか 『平凡社俳句歳時記 夏』 平凡社
・茨木和生、宇多喜代子ほか 『新版 角川俳句大歳時記 夏』 KADOKAWA