【歳時記・夏】 風鈴 ふうりん

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山王寺の風鈴祭りの写真

風鈴 ふうりん

〈傍題〉

風鈴売 ふうりんうり ・ 風鐸 ふうたく ・ 江戸風鈴 えどふうりん ・ 南部風鈴 なんぶふうりん ・ 貝殻風鈴 かいがらふうりん

金属、陶器、ガラス、貝殻などで作られた鈴で、風通しのよいところに吊るし、音色に涼気を楽しむ。
一般的には鐘のような形で内側から舌(ぜつ)が垂れ、それに短冊などが付けてある。
中国から伝わり、日本では鎌倉時代に、風鈴に関する記録がみられる。室町時代から江戸時代以降にかけて、上流階級から庶民まで用いるようになったという。縁日などで売られ、風にいっせいになり出すと音も見た目も美しい。
音の涼を味わうのはわが国独自の感覚のようで、他国ではほとんどみられないようである。

〈比較〉

なし

〈例句〉

ふかぬ日の風鈴は蜂のやどりかな 言水
(ふかぬひの ふうりんは はちのやどりかな)

風鈴や花にはつらき風ながら 蕪村
(ふうりんや はなにはつらき かぜながら)

万緑になじむ風鈴昼も夜も 蛇笏
(ばんりよくに なじむふうりん ひるもよも)

風鈴や刻刻暮るる淡路島 播水
(ふうりんや こくこくくるる あはぢしま)

風鈴の空は荒星ばかりかな 不器男
(ふうりんの そらはあらぼし ばかりかな)

鉄壁の心の隙に風鈴鳴る 楸邨
(てつぺきの こころのすきに ふうりんなる)

風鈴のもつるるほどに涼しけれ 汀女
(ふうりんの もつるるほどに すずしけれ)

風鈴や目覚めてけふのくらしあり 真砂女
(ふうりんや 目覚めてけふの くらしあり)

風鈴の音の中なる夕ごころ 比奈夫
(ふうりんの おとのなかなる ゆふごころ)

風鈴に風のすぐ来る路地暮し あや
(ふうりんに かぜのすぐくる ろぢぐらし)

兄の吊る母の風鈴鳴りにけり 杏子
(あにのつる ははのふうりん なりにけり)

〈参考資料〉

・飯田龍太、稲畑汀子ほか 『カラー版 新日本大歳時記 愛蔵版』 講談社
・稲畑汀子 『ホトトギス新歳時記 第三版』 三省堂
・飯田蛇笏、富安風生ほか 『平凡社俳句歳時記 夏』 平凡社
・茨木和生、宇多喜代子ほか 『新版 角川俳句大歳時記 夏』 KADOKAWA

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