【歳時記・夏】 蓮 はす
見出し かな
〈傍題〉
はちす ・ 蓮の花 はすのはな ・ 蓮華 れんげ ・ 紅蓮 べにはす ・ 白蓮 びゃくれん/しらはす ・ 蓮池 はすいけ
ハス科の多年性水草。インド原産とされる。
季語・季題としての「蓮」は主に花をさす。
花が咲くときポンと音を発するという俗説があり、それを確かめるために、花が開く早朝が蓮見の時間として選ばれることも多い。
根をレンコンとして食用にしており、古くから各地の池や沼、水田で栽培された。水底の地下茎から柄を伸ばし60cmほどにもなる丸く大きな葉を水面上に出す。夏に長い花柄を直立に伸ばし宝珠の形をした蕾をつけ、夜明けに花弁を重ねた美しい大型の花を開く。
仏教では極楽浄土を象徴する花として「蓮華」という。
花が終わると花托が生長し蜂の巣のような形になるためハチスともよばれ、それが縮まって「ハス」になったといわれる。
〈比較〉
【歳時記・夏】 蓮の浮葉 はすのうきは
【歳時記・夏】 蓮見 はすみ
〈例句〉
蓮世界緑の不二の沈むらく 素堂
(はすせかい みどりのふじの しずむらく)
白蓮に人影さはる夜明けかな 蓼太
(しらはすに ひとかげさはる よあけかな)
蓮の香や水をはなるる茎二寸 蕪村
(はすのかや みづをはなるる くきにすん)
葩を葉におく風の蓮はちすかな 暁台
(はなびらを はにおく かぜのはちすかな)
一つづつ夕影抱く蓮かな 虚子
(ひとつづつ ゆふかげいだく はちすかな)
水泡の相依れば消ゆ蓮の花 鬼城
(みづあわの あひよればきゆ はすのはな)
ほのぼのと舟押し出すや蓮の中 漱石
(ほのぼのと ふねおしだすや はすのなか)
白う咲きてきのふけふなき蓮かな 水巴
(しろうさきて きのふけふなき はちすかな)
暁闇を弾いて蓮の白さかな 龍之介
(げうあんを はじいてはすの しろさかな)
蓮咲くや桶屋の路地の行きどまり 万太郎
(はすさくや をけやのろぢの いきどまり)
攻防や千年の蓮くれなゐに 青邨
(こうばうや せんねんのはす くれなゐに)
白はちす夕べは鷺になりぬべし 達治
(しろはちす ゆふべはさぎに なりぬべし)
遠き世の如く遠くに蓮の華 誓子
(とほきよの ごとくとほくに はすのはな)
蓮咲いて風その上をその下を 三樹彦
(はすさいて かぜそのうへを そのしたを)
〈参考資料〉
・山本健吉 『山本健吉 基本季語五〇〇選』 講談社
・飯田龍太、稲畑汀子ほか 『カラー版 新日本大歳時記 愛蔵版』 講談社
・飯田蛇笏、富安風生ほか 『平凡社俳句歳時記 夏』 平凡社
・茨木和生、宇多喜代子ほか 『新版 角川俳句大歳時記 夏』 KADOKAWA