【歳時記・夏】 梅雨 つゆ
梅雨 つゆ
〈傍題〉
梅雨 ばいう ・ 黴雨 ばいう ・ 梅霖 ばいりん ・ 青梅雨 あおつゆ(あをつゆ) ・ 梅の雨 うめのあめ ・ 空梅雨 からつゆ ・ 早梅雨 はやつゆ ・ 荒梅雨 あらづゆ ・ 墜栗花雨 ついりあめ ・ 梅雨じめり つゆじめり ・ 梅雨前線 ばいうぜんせん ・ 梅雨時 つゆどき ・ ついり ・ 梅雨雲 つゆぐも ・ 五月雲 さつきぐも ・ 梅雨曇 つゆぐもり ・ 五月曇 さつきぐもり ・ 梅雨空 つゆぞら ・ 梅天 ばいてん ・ 旱梅雨 ひでりつゆ
暦のうえでは6月21日頃の入梅の日から30日間、およびその間の雨期をさす。
昔は芒種の後の壬(みずのえ)の日(陽暦6月6日頃)を梅雨の入りとし、小暑の後の壬の日(陽暦7月7日頃)を梅雨明けとした。
梅の実が黄熟する頃にあたるので「梅雨」といい、黴(かび)を生ずる時期でもあるので「黴雨」とも書く。
〈比較〉
【歳時記・夏】 五月雨 さみだれ
【歳時記・夏】 梅雨晴 つゆばれ
〈例句〉
降る音や耳もすふ成梅の雨 芭蕉
(ふるおとや みみもすふなる うめのあめ)
北海の梅雨の港にかかり船 虚子
(ほくかいの つゆのみなとに かかりぶね)
荒梅雨や山家の煙這ひまはる 普羅
(あらづゆや やまがのけむり はひまはる)
梅雨ふかき山さまよへば吾も獣 蓼汀
(つゆふかき やまさまよへば われもけもの)
高浪もうつりて梅雨の掛け鏡 蛇笏
(たかなみも うつりてつゆの かけかがみ)
大梅雨の茫茫と沼らしきもの 素十
(おほつゆの ばうばうと ぬまらしきもの)
青梅雨の金色世界来て拝む 秋櫻子
(あをつゆの こんじきせかい きてをがむ)
万華鏡めきて尾燈や梅雨の街 青畝
(まんげきやう めきてびとうや つゆのまち)
梅雨は降り梅雨は晴るるといふことを 夜半
(つゆはふり つゆははるると いふことを)
ありとあるものの梅雨降る音の中 素逝
(ありとある もののつゆふる おとのなか)
田の澄みと川の真濁り梅雨も末 蒼石
(たのすみと かはのまにごり つゆもすゑ)
梅雨の犬で氏も素性もなかりけり 敦
(つゆのいぬで うぢもすじやうも なかりけり)
梅雨ふかし戦没の子や恋もせで 貞
(つゆふかし せんぼつのこや こひもせで)
ふところに乳房ある憂さ梅雨ながき 信子
(ふところに ちぶさあるうさ つゆながき)
梅雨の家老女を赤松が照らす 兜太
(つゆのいへ らうぢよ(らうによ)を あかまつがてらす)
抱く吾子も梅雨の重みといふべしや 龍太
(だくあこも つゆのおもみと いふべしや)
血を喀くや梅雨の畳に爪を立て 八束
(ちをはくや つゆのたたみに つめをたて)
考の二転三転梅雨豪雨 立子
(かんがへの にてんさんてん つゆがうう)
膝の荷が卓押す梅雨のラーメン屋 眸
(ひざのにが たくおす つゆのらーめんや)
梅雨霧を見てゐていつか包まるる 汀子
(つゆぎりを みてゐていつか つつまるる)
〈参考資料〉
・山本健吉 『山本健吉 基本季語五〇〇選』 講談社
・飯田龍太、稲畑汀子ほか 『カラー版 新日本大歳時記 愛蔵版』 講談社
・稲畑汀子 『ホトトギス新歳時記 第三版』 三省堂
・飯田蛇笏、富安風生ほか 『平凡社俳句歳時記 夏』 平凡社
・茨木和生、宇多喜代子ほか 『新版 角川俳句大歳時記 夏』 KADOKAWA