【歳時記・春】 三月 さんがつ(さんぐわつ)
三月 さんぐわつ(さんぐわつ)
〈傍題〉
なし
寒さの中にも暖かい日が出てきて、春らしさが増す仲春の月。
獺祭、お水取、彼岸会などが行われ、下旬には桜が咲き始める。
〈比較〉
【歳時記・春】 如月 きさらぎ
〈例句〉
富士にそうて三月七日八日かな 信徳
(ふじにそうて さんぐわつなのか やうかかな)
三月と文にかくのも名残りかな 去来
(さんぐわつと ふみにかくのも なごりかな)
三月や木曾のおくまで花のちる 蝶夢
(さんぐわつや きそのおくまで はなのちる)
大雨や花の三月ふりつぶす 一茶
(おほあめや はなのさんぐわつ ふりつぶす)
三月や廊の花ふむ薄草履 蛇笏
(さんぐわつや らうのはなふむ うすざうり)
三月やモナリザを売る石畳 不死男
(さんぐわつや もなりざをうる いしだたみ)
三月の声のかかりし明るさよ 風生
(さんぐわつの こゑのかかりし あかるさよ)
雨がちにはや三月もなかばかな 万太郎
(あめがちに はやさんぐわつも なかばかな)
三月の産屋障子を継貼りす 波郷
(さんぐわつの うぶやしやうじを つぎはりす)
三月の飛雪見てをり税務署にて 遷子
(さんぐわつの ひせつみてをり ぜいむしよにて)
三月や生毛生えたる甲斐の山 澄雄
(さんぐわつや うぶげはえたる かひのやま)
三月の土間に大きな山の靴 千空
(さんぐわつの どまにおほきな やまのくつ)
うら若き三月の川豁を出づ 器
(うらわかき さんぐわつのかは たにをいづ)
三月の甘納豆のうふふふふ 稔典
(さんぐわつの あまなつとうの うふふふふ)
〈参考資料〉
・飯田龍太、稲畑汀子ほか 『カラー版 新日本大歳時記 愛蔵版』 講談社
・稲畑汀子 『ホトトギス新歳時記 第三版』 三省堂
・飯田蛇笏、富安風生ほか 『平凡社俳句歳時記 春』 平凡社
・茨木和生、宇多喜代子ほか 『新版 俳句大歳時記 春』 KADOKAWA