【歳時記・春】 春灯 しゅんとう

最終更新日

夜桜と提灯の写真

春灯 しゅんとう

〈傍題〉

春の灯 はるのひ ・ 春灯 はるともし ・ 春の燭 はるのしよく

春の夜にともす灯火をいう。
明るさ、のびやかさ、華やぎ、艶やかさなどが感じられる。

〈比較〉

【歳時記・夏】 夏の灯 なつのひ

【歳時記・秋】 秋の灯 あきのひ

【歳時記・冬】 冬の灯 ふゆのひ

〈例句〉

障子今しまり春の燈ほとともり 虚子
(しやうじいま しまりはるのひ ほとともり)

春燈やはなのごとくに嬰のなみだ 蛇笏
(しゆんとうや はなのごとくに このなみだ)

廻廊に献じて春の灯かな 風生
(くわいらうに けんじて はるのともしかな)

春の燈や女は持たぬのどぼとけ 草城
(はるのひや をんなはもたぬ のどぼとけ)

春の灯のあるひは暗くやはらかく 万太郎
(はるのひの あるひはくらく やはらかく)

春燈の真下に坐せし手くらがり 立子
(しゆんとうの ましたにざせし てくらがり)

春燈にひとりの奈落ありて坐す 節子
(しゆんとうに ひとりのならく ありてざす)

春燈として仏燈の暈のゆれ 六林男
(しゆんとうとして ぶつとうの かさのゆれ)

とぼしくて大きくて野の春ともし 七菜子
(とぼしくて おほきくて ののはるともし)

春の灯に口を開けたる指狐 桂一
(はるのひに くちをあけたる ゆびぎつね)

春燈下褒めて終りし稽古事 比奈夫
(しゆんとうか ほめてをはりし けいこごと)

春灯下絵本ちらばりそこら赤 千鶴子
(しゆんとうか ゑほんちらばり そこらあか)

春灯祇園は道へ零れけり 志津枝
(はるともし ぎをんはみちへ こぼれけり)

〈参考資料〉

・山本健吉 『山本健吉 基本季語五〇〇選』 講談社
・飯田龍太、稲畑汀子ほか 『カラー版 新日本大歳時記 愛蔵版』 講談社
・稲畑汀子 『ホトトギス新歳時記 第三版』 三省堂
・飯田蛇笏、富安風生ほか 『平凡社俳句歳時記 春』 平凡社
・茨木和生、宇多喜代子ほか 『新版 俳句大歳時記 春』 KADOKAWA

waticoti管理人