【歳時記・夏】 空蟬 うつせみ
空蟬 うつせみ
〈傍題〉
蟬の殻 せみのから ・ 蟬の抜け殻 せみのぬけがら ・ 蟬のもぬけ せみのもぬけ
蟬の卵は木の幹などに産みつけられ、孵化した幼虫は土中で数年~十数年過ごすといわれる。蛹(さなぎ)になると地上の木などにのぼり、羽化して成虫になる。蟬の抜け殻は背中が割れており、眼や節など細密に形状がのこっている。
〈比較〉
〈例句〉
梢よりあだに落ちけり蟬のから 芭蕉
(こずゑより あだにおちけり せみのから)
わくら葉に取りついて蟬のもぬけかな 蕪村
(わくらばに とりついてせみの もぬけかな)
空蟬のふんばつて居て壊はれけり 普羅
(うつせみの ふんばつてゐて こはれけり)
空蟬の雨ため草にころげけり 久女
(うつせみの あめためくさに ころげけり)
茂吉の墓空せみはみな背を曲げて 蒼石
(もきちのはか うつせみはみな せをまげて)
天地の間にかろし蟬の殻 青々
(あめつちの あいだにかろし せみのから)
うつせみをとればこぼれぬ松の膚 草城
(うつせみを とればこぼれぬ まつのはだ)
汝等まろき脂ぎつたる空蟬よ 草田男
(ならまろき あぶらぎつたる うつせみよ)
岩に爪たてて空蟬泥まみれ 三鬼
(いわにつめ たててうつせみ どろまみれ)
空蝉の一太刀浴びし背中かな 朱鳥
(うつせみの ひとたちあびし せなかかな)
空蟬のなほ苦しみを負ふかたち 狩行
(うつせみの なはくるしみを おふかたち)
〈参考資料〉
・山本健吉 『山本健吉 基本季語五〇〇選』 講談社
・飯田龍太、稲畑汀子ほか 『カラー版 新日本大歳時記 愛蔵版』 講談社
・稲畑汀子 『ホトトギス新歳時記 第三版』 三省堂
・飯田蛇笏、富安風生ほか 『平凡社俳句歳時記 夏』 平凡社
・茨木和生、宇多喜代子ほか 『新版 角川俳句大歳時記 夏』 KADOKAWA