【歳時記・冬】 冬の灯 ふゆのひ
冬の灯 ふゆのひ
〈傍題〉
冬灯 ふゆひ/ふゆともし ・ 寒灯 かんとう
冬の厳しい寒さの中にともる灯火のこと。
〈比較〉
【歳時記・春】 春の灯 はるのひ
【歳時記・秋】 秋の灯 あきのひ
〈例句〉
今我を見出すここの寒燈下 虚子
(いまわれを みいだすここの かんとうか)
寒灯に柱も細る思ひかな 虚子
(かんとうに はしらもほそる おもひかな)
冬灯死は容顔に遠からず 蛇笏
(ふゆともし しはようがんに とほからず)
淋しさの冬のともしび灯すらん 素十
(さびしさの ふゆのともしび ともすらん)
冬灯人のこころを見まもりぬ 風生
(ふゆともし ひとのこころを みまもりぬ)
冬の灯のいきなりつきしあかるさよ 万太郎
(ふゆのひの いきなりつきし あかるさよ)
寒灯を当つ神将の咽喉ぼとけ 多佳子
(かんとうをあつ しんしやうの のとぼとけ)
子がかへり一寒燈の座が満ちぬ 楸邨
(こがかへり いちかんとうの ざがみちぬ)
寒灯の一つ一つよ国敗れ 三鬼
(かんとうの ひとつひとつよ くにやぶれ)
寒燈の消えて乾坤闇に落つ 立子
(かんとうの きえてけんこん やみにおつ)
寒き灯にみどり児の眼は埴輪の眼 梵
(さむきひに みどりごのめは はにわのめ)
辞書割つて一字を寒燈下に拾ふ まもる
(じしよわつて いちじを かんとうかにひろふ)
おのれには冬の灯妻には一家の灯 広
(おのれにはふゆのひ つまにはいつかのひ)
寒灯の真下に据ゑて面打てり 鉄治
(かんとうの ましたにすゑて めんうてり)
美容室もつとも冬燈飼ひ馴らす 京子
(びようゐん もつともふゆひ かひならす)
冬灯二つ一つと消えて山 俊樹
(ふゆともし ふたつひとつと きえてやま)
〈参考資料〉
・飯田龍太、稲畑汀子ほか 『カラー版 新日本大歳時記 愛蔵版』 講談社
・稲畑汀子 『ホトトギス新歳時記 第三版』 三省堂
・飯田蛇笏、富安風生ほか 『平凡社俳句歳時記 冬』 平凡社
・平井照敏編 『新歳時記 冬 軽装版』 河出書房新社