【歳時記・冬】 酉の市 とりのいち
酉の市 とりのいち
〈傍題〉
酉の市 とりのまち ・ お酉さま おとりさま ・ 酉の町詣 とりのまちもうで(とりのまちまうで) ・ 一の酉 いちのとり ・ 二の酉 にのとり ・ 三の酉 さんのとり ・ 頭の芋 とうのいも/かしらのいも ・ 熊手市 くまでいち ・ おかめ市 おかめいち ・ 三島酉の市 みしまとりのいち
陽暦11月の酉の日に行われる、鷲神社/大鳥神社の祭礼のこと。東京では「とりのまち」とよばれていた。
本社は大阪府堺市鳳町の大鳥大社。東京では、かつての吉原の裏手にあたる、台東区千束の鷲神社の祭りが特に有名。
三の酉まである年は火事が多いといわれてきた。
市には縁起物の熊手を売る店が立ち並ぶ。また、蒸した八つ頭をおかめ笹に通した「頭の芋」も、人の頭に立つという縁起をかついで売られる。
〈比較〉
【歳時記・冬】 熊手 くまで
〈例句〉
世の中も淋しくなりぬ三の酉 子規
(よのなかも さびしくなりぬ さんのとり)
若夫婦出してやりけり酉の市 虚子
(わかふうふ だしてやりけり とりのいち)
此頃の吉原知らず酉の市 虚子
(このごろの よしはらしらず とりのいち)
酉の夜や入谷へくらき道いくつ 龍雨
(とりのよや いりやへくらき みちいくつ)
三の酉をいふ火事をいふ女かな 東洋城
(さんのとりをいふ かじをいふ をんなかな)
たかだかとあはれは三の酉の月 万太郎
(たかだかと あはれはさんの とりのつき)
灯るまで耐へてふりいづ酉の市 秋櫻子
(ともるまで たへてふりいづ とりのいち)
酉の市疱瘡伸も照らさるる 素十
(とりのいち はうさうがみも てらさるる)
しむる手のあざやかさ聞け酉の市 青畝
(しむるての あざやかさきけ とりのいち)
一と二はしぐれて風の三の酉 羽公
(いちとには しぐれてかぜの さんのとり)
風おろしくる青空や酉の市 波郷
(かぜおろし くるあをぞらや とりのいち)
やはらかに人押し合ひて一の酉 金鈴
(やはらかに ひとおしあひて いちのとり)
素うどんの薬味の匂ひ一の酉 狩行
(すうどんの やくみのにほひ いちのとり)
一の酉もまれて厄を貰ふまじ あまり
(いちのとり もまれてやくを もらふまじ)
つややかなおかめに出会ふ一の酉 公恵
(つややかな おかめにであふ いちのとり)
宵は身の入らぬ声して酉の市 貞
(よひはみの いらぬこゑして とりのいち)
口上を風が持ち去る一の酉 澄男
(こうじやうを かぜがもちさる いちのとり)
仲見世も今日は抜け道酉の市 木雞子
(なかみせも けふはぬけみち とりのいち)
降りやまぬ雨に店解く酉の市 丘蜂
(ふりやまぬ あめにみせとく とりのいち)