【歳時記・冬】 木の葉 このは

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木の葉の写真

木の葉 このは

〈傍題〉

木の葉散る このはちる ・ 木の葉の雨 このはのあめ ・ 木の葉の時雨 このはのしぐれ ・ 木の葉焼く このはやく

枯れ落ちる時期の木の葉のこと。散って地に落ちたもの、風に散りつつあるもの、枝に残っているものも、どれもこの季語に含まれる。

〈比較〉

【歳時記・冬】 枯葉
【歳時記・冬】 落葉

〈例句〉

人待つや木葉かた寄る風の道 素堂
(ひとまつや このはかたよる かぜのみち)

地獄へは落ちぬ木の葉の夕哉 宗鑑
(ぢごくへは おちぬこのはの ゆふべかな)

宮人よわが名をちらせ木葉川 芭蕉
(みやびとよ わがなをちらせ このはがは)

水底の岩に落ちつく木の葉かな 丈草
(みなそこの いはにおちつく このはかな)

世の中にやどるものなし散木のは 杉風
(よのなかに やどるものなし ちるこのは)

かろき身のはてや木葉の吹とまり 猿雖
(かろきみの はてやこのはの ふきとまり)

岩かどにつれなき風の木の葉かな 北枝
(いはかどに つれなきかぜの このはかな)

膝もとの折敷の糊に木の葉かな 園女
(ひざもとの をしきののりに このはかな)

籠城の汁も薪も木の葉かな 蕪村
(ろうじやうの しるもたきぎも このはかな)

うら表木の葉浮べるさび江かな 白雄
(うらおもて このはうかべる さびえかな)

風落ちて更に水行く木の葉かな 二柳
(かぜおちて さらにみづいく このはかな)

ちる木の葉渡世念仏通りけり 一茶
(ちるこのは とせいねんぶつ とほりけり)

木の葉降るや掃へども水灑げども 露月
(このはふるや はらへども みづそそげども)

しら壁にあたる月夜のこの葉かな 蒼虬
(しらかべに あたるつきよの このはかな)

純粋に木の葉ふる音空は瑠璃 茅舎
(じゆんすいに このはふるおと そらはるり)

赤き入日の中の木の葉の音ききし 暮笛
(あかきいりひの なかのこのはの おとききし)

マンホール木の葉が辿り着きて落つ 圭岳
(まんほーる このはが だとりつきておつ)

木の葉ふりやまずいそぐなよいそぐなよ 楸邨
(このはふりやまず いそぐなよいそぐなよ)

飛ぶ木の葉飛ばぬ木の葉を促して 化石
(とぶこのは とばぬこのはを うながして)

木の葉散り昨日と今日がまぎらはし 暮石
(このはちり きのふとけふが まぎらはし)

木の葉散るわれ生涯に何為せし 遷子
(このはちる われしやうがいに なになせし)

木の葉散る別々に死が来るごとく 清子
(このはちる べつべつにしが くるごとく)

一枚の木の葉めく我東尋坊 あや
(いちまいの このはめくわれ とうじんばう)

〈参考資料〉

・山本健吉 『山本健吉 基本季語五〇〇選』 講談社
・飯田龍太、稲畑汀子ほか 『カラー版 新日本大歳時記 愛蔵版』 講談社
・稲畑汀子 『ホトトギス新歳時記 第三版』 三省堂
・飯田蛇笏、富安風生ほか 『平凡社俳句歳時記 冬』 平凡社
・平井照敏編 『新歳時記 冬 軽装版』 河出書房新社

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