【歳時記・秋】 蔦 つた

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蔦 つた

〈傍題〉

 つた ・ 蔦紅葉 つたもみじ(つたもみぢ) ・ 蔦の葉 つたのは ・ 錦蔦 にしきつた ・ 蔦蘿 つたかずら(つたかづら)

ブドウ科落葉性蔓性の植物。夏、葉腋(ようえき)に小さな五弁の花をつける。
「蔦かずら」は、蔦の古称。

〈比較〉

【歳時記・春】 蔦の若葉 つたのわかば

【歳時記・夏】 青蔦 あおつた(あをつた)

【歳時記・冬】 枯蔦 かれつた

〈例句〉

笈の角梢の蔦に知られけり 其角
(おひのすみ こずゑのつたに しられけり)

打返し見れば紅葉す蔦の裏 蕪村
(うちかへし みればもみぢす つたのうら)

桟や命をからむ蔦かづら 芭蕉
(かけはしや いのちをからむ つたかづら)

引けば寄る蔦の梢のここかしこ 太祇
(ひけばよる つたのこずゑの ここかしこ)

石山の石にも蔦の裏表 乙州
(いしやまの いしにもつたの うらおもて)

蔦の葉の二枚の紅葉客を待つ 虚子
(つたのはの にまいのもみぢ きやくをまつ)

大木の枯るるに逢へり蔦蘰 鬼城
(たいぼくの かるるにあへり つたかづら)

石垣やあめふりそそぐ蔦明り 蛇笏
(いしがきや あめふりそそぐ つたあかり)

蔦紅葉濡れしは今かしぐれけむ 秋櫻子
(つたもみぢ ぬれしはいまか しぐれけむ)

蔦紅葉けなげに登りつめにけり 青畝
(つたもみぢ けなげに のぼりつめにけり)

欠け欠けて蔦のもみぢ葉つひになし 風生
(かけかけて つたのもみぢば つひになし)

白亜館紅蔦淋漓闇に散る 草田男
(はくあくわん べにつたりんり やみにちる)

蔦紅葉巌の結界とざしけり 林火
(つたもみぢ いはのけつかい とざしけり)

天辺に蔦行きつけず紅葉せり 甲子雄
(てつぺんに つたゆきつけず もみぢせり)

皆知れる蔦の館でありにけり 汀子
(みなしれる つたのやかたで ありにけり)

落葉松を駈けのぼる火の蔦一縷 耕二
(からまつをかけのぼる ひのつたいちる)

〈参考資料〉

・山本健吉 『山本健吉 基本季語五〇〇選』 講談社
・飯田龍太、稲畑汀子ほか 『カラー版 新日本大歳時記 愛蔵版』 講談社
・稲畑汀子 『ホトトギス新歳時記 第三版』 三省堂
・飯田蛇笏、富安風生ほか 『平凡社俳句歳時記 秋』 平凡社
・茨木和生、宇多喜代子ほか 『新版 角川俳句大歳時記 秋』 KADOKAWA
・『日本国語大辞典 第2版』 小学館

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