【歳時記・秋】 蕎麦の花 そばのはな
蕎麦の花 そばのはな
〈傍題〉
そばむぎの花 そばむぎのはな
蕎麦に咲く白または淡い紅色の小さな五弁の花で、香りが強い。花の盛りには畑が一面白色に見える。
〈比較〉
〈例句〉
蕎麦はまだ花でもてなす山路かな 芭蕉
(そばはまだ はなでもてなす やまぢかな)
汐風にもめても蕎麦の白さ哉 浪化
(しほかぜに もめてもそばの しろさかな)
山畑や煙りのうへのそばの花 蕪村
(やまはたや けむりのうへの そばのはな)
道のべや手よりこぼれて蕎麦の花 蕪村
(みちのべや てよりこぼれて そばのはな)
山畠やそばの白さもぞつとする 一茶
(やまはたや そばのしろさも ぞつとする)
痩山にぱつと咲けりそばの花 一茶
(やせやまに ぱつとさきけり そばのはな)
花蕎麦の茎を揃へし入日かな 龍雨
(はなそばの くきをそろへし いりひかな)
ほそぼそと起き上りけり蕎麦の花 鬼城
(ほそぼそと おきあがりけり そばのはな)
啄木の碑蕎麦の花明り 青邨
(たくぼくのいしぶみ そばのはなあかり)
そばの花山傾けて白かりき 青邨
(そばのはな やまかたむけて しろかりき)
怨霊は平家も白し蕎麦の花 静塔
(をんりやうは へいけもしろし そばのはな)
畑角を浪にさらはれ蕎麦咲ける 措大
(はたすみを なみにさらはれ そばさける)
花蕎麦や雲を千分けて日の暮るる 草田男
(はなそばや くもをちわけて ひのくるる)
〈参考資料〉
・飯田龍太、稲畑汀子ほか 『カラー版 新日本大歳時記 愛蔵版』 講談社
・稲畑汀子 『ホトトギス新歳時記 第三版』 三省堂
・飯田蛇笏、富安風生ほか 『平凡社俳句歳時記 秋』 平凡社
・茨木和生、宇多喜代子ほか 『新版 角川俳句大歳時記 秋』 KADOKAWA