【歳時記・秋】 林檎 りんご
林檎 りんご
〈傍題〉
紅玉 こうぎょく ・ 印度林檎 いんどりんご ・ 国光 こっこう(こくくわう) ・ ふじ
一般に西洋リンゴをさす。中央アジア温帯・冷帯が原産のバラ科落葉高木の実。
早生種である青林檎を除けば秋から冬にかけて成熟し、品種が豊富。
西洋リンゴが普及する以前の和リンゴは江戸時代・元禄期に季語とされ、夏の季語に挙げられていた。
〈比較〉
なし
〈例句〉
世の花の色に染めたるりんごかな 太祇
(よのはなの いろにそめたる りんごかな)
赤き林檎青き林檎や卓の上 子規
(あかきりんご あをきりんごや たくのうへ)
食みかけの林檎に歯当て人を見る 虚子
(はみかけの りんごにはあて ひとをみる)
皿の上の林檎揺れをり食堂車 虚子
(さらのうへの りんごゆれをり しよくだうしや)
歯にあてて雪の香ふかき林檎かな 水巴
(はにあてて ゆきのかふかき りんごかな)
濃き紅は林檎の肩をあふれ越ゆ 青邨
(こきべには りんごのかたを あふれこゆ)
オリオンと店の林檎が帰路の栄 草田男
(おりおんと みせのりんごが きろのはえ)
跳ねくだる坂の林檎や日向めざし 三鬼
(はねくだる さかのりんごや ひなためざし)
人の恋林檎を噛りながら聴く みつる
(ひとのこひ りんごをかじりながらきく)
牧の娘は馬に横乗り林檎かむ 白雨
(まきのこは うまによこのり りんごかむ)
星空へ店より林檎あふれをり 多佳子
(ほしぞらへ みせよりりんご あふれをり)
空は太初の青さ妻より林檎うく 草田男
(そらはたいしよのあをさ つまよりりんごうく)
林檎嚙む歯に青春をかがやかす 麦南
(りんごかむ はにせいしゆんを かがやかす)
一箱の最後の林檎籾を出づ 朱鳥
(ひとはこの さいごのりんご もみをいづ)
林檎むく五重の塔に刃を向けて 朱鳥
(りんごむく ごぢゆうのたふに はをむけて)
声出して声遠くまで林檎売り 龍太
(こゑだして こゑとほくまで りんごうり)
木の林檎地上の妻の籠に満つ 清子
(きのりんご ちじやうのつまの かごにみつ)
ほほゑみや林檎の歯あと較ぶなる 友次郎
(ほほゑみや りんごのはあと くらぶなる)
なめらかに紅のながるる林檎かな 占魚
(なめらかに べにのながるる りんごかな)
刃を入るる隙なく林檎紅潮す 節子
(はをいるる すきなくりんご こうてうす)
林檎のみあたらし瞽女のお仏壇 一都
(りんごのみあたらし ごぜのおぶつだん)
身籠りて短かき膝に林檎むく 一路
(みごもりて みじかきひざに りんごむく)
赤くなる為の林檎の日を纏ふ 静良
(あかくなるためのりんごの ひをまとふ)
制服に林檎を磨き飽かぬかな 桂
(せいふくに りんごをみがき あかぬかな)
〈参考資料〉
・山本健吉 『山本健吉 基本季語五〇〇選』 講談社
・飯田龍太、稲畑汀子ほか 『カラー版 新日本大歳時記 愛蔵版』 講談社
・稲畑汀子 『ホトトギス新歳時記 第三版』 三省堂
・飯田蛇笏、富安風生ほか 『平凡社俳句歳時記 秋』 平凡社
・茨木和生、宇多喜代子ほか 『新版 角川俳句大歳時記 秋』 KADOKAWA