【歳時記・秋】 木犀 もくせい
木犀 もくせい
〈傍題〉
木犀の花 もくせいのはな ・ 金木犀 きんもくせい ・ 銀木犀 ぎんもくせい ・ 薄黄木犀 うすぎもくせい ・ 桂の花 かつらのはな
モクセイ科の小高木の総称。幹の紋理(もんり)が動物のサイ(犀)の肌に似ていることからこの名がついたといわれる。
多くは鑑賞用の庭木として植えられ、秋の彼岸頃から開く小さな花は、群れ咲いて強い芳香を放つ。
花の色はそれぞれ、金木犀がオレンジ色、銀木犀は白色、薄黄木犀は淡い黄色である。
〈比較〉
なし
〈例句〉
木犀の昼は醒めたる香炉かな 嵐雪
(もくせいの ひるはさめたる かうろかな)
木犀の香に染む雨の鴉かな 鏡花
(もくせいの かにしむあめの からすかな)
木犀の香に打たる鞭打たる如 虚子
(もくせいの かにうたる むちうたるごと)
木犀の香にあけたての障子かな 虚子
(もくせいのかに あけたての しやうじかな)
家小さく木犀の香の大いなる 素十
(いへちさく もくせいのかの おほいなる)
この門の木犀の香に往来かな 素十
(このかどの もくせいのかに いききかな)
木犀にとほき潮のみちにけり 秀野
(もくせいに とほきうしほの みちにけり)
木犀の香や大仏の厚瞼 鬼房
(もくせいのかや だいぶつの あつまぶた)
木犀の香に士族住み今も住み 紀陽
(もくせいのかに しぞくすみ いまもすみ)
木犀一枝暗き病廊通るなり 三鬼
(もくせいいつし くらきびやうらう とほるなり)
木犀や社家の子ゆゑの巫女づとめ 敦
(もくせいや しやけのこゆゑの みこづとめ)
天つつぬけに木犀と豚にほふ 龍太
(てんつつぬけに もくせいとぶたにほふ)
金木犀風の行手に石の塀 欣一
(きんもくせい かぜのゆくてに いしのへい)
沈黙は金なり金木犀の金 朗人
(ちんもくはきんなり きんもくせいのきん)
金木犀部屋かへて読む放浪記 秞子
(きんもくせい へやかへてよむ はうらうき)
木犀をみごもるまでに深く吸ふ 夫佐恵
(もくせいを みごもるまでに ふかくすふ)
木犀まだ模索の中の香りなる 美代子
(もくせいまだ もさくのなかの かをりなる)
〈参考資料〉
・飯田龍太、稲畑汀子ほか 『カラー版 新日本大歳時記 愛蔵版』 講談社
・稲畑汀子 『ホトトギス新歳時記 第三版』 三省堂
・飯田蛇笏、富安風生ほか 『平凡社俳句歳時記 秋』 平凡社
・茨木和生、宇多喜代子ほか 『新版 角川俳句大歳時記 秋』 KADOKAWA
・『日本大百科全書 ニッポニカ』 小学館