【歳時記・秋】 鶺鴒 せきれい
鶺鴒 せきれい
〈傍題〉
庭叩 にわたたき(にはたたき) ・ 石叩 いしたたき ・ 嫁教鳥 とつぎおしえどり(とつぎをしへどり) ・ 嫁鳥 とつぎどり ・ 稲負鳥 いなおおせどり(いなおほせどり) ・ 妹背鳥 いもせどり ・ 背黒鶺鴒 せぐろせきれい ・ 黄鶺鴒 きせきれい ・ 白鶺鴒 はくせきれい ・ 薄墨鶺鴒 うすずみせきれい ・ 爪長鶺鴒 つめながせきれい ・ 石見鶺鴒 いわみせきれい ・ にわくなぶり(にはくなぶり)
スズメ目セキレイ科に属する鳥の総称。日本には5種類生息するという。
ほとんどの種は、長い尾を絶えず上下に(何かを打つように)動かす習性があり、そこから「庭叩」「石叩」の異名がある。
古今(こきん)伝授の三鳥は「呼子鳥(よぶこどり)・百千鳥(ももちどり)/都鳥・稲負鳥」とされているが、このうち最後の「稲負鳥」は鶺鴒のことだと言われている。
〈比較〉
なし
〈例句〉
世の中は鶺鴒の尾のひまもなし 凡兆
(よのなかは せきれいのをの ひまもなし)
鶺鴒のなぶり出しけり山の雨 一茶
(せきれいの なぶりだしけり やまのあめ)
鶺鴒のとどまり難く走りけり 虚子
(せきれいの とどまりがたく はしりけり)
せきれいの居るともなくて波白し 鬼城
(せきれいの ゐるともなくて なみしろし)
鶺鴒のひるがへり入る松青し 秋櫻子
(せきえいの ひるがへりいる まつあをし)
潦また鶺鴒の黄を点ず 瓜人
(にはたづみ またせきれいの きをてんず)
身の音のほかはひぐれのいしたたき 楸邨
(みのおとの ほかはひぐれの いしたたき)
山川の鶺鴒の黄の朝まだき たかし
(やまかはの せきれいのきの あさまだき)
鶺鴒の尾が叩きゆく布留の道 春秋
(せきれいの をがたたきゆく ふるのみち)
会釈する背黒鶺鴒嫁が来る 新草
(ゑしやくする せぐろせきれい よめがくる)
〈参考資料〉
・山本健吉 『山本健吉 基本季語五〇〇選』 講談社
・飯田龍太、稲畑汀子ほか 『カラー版 新日本大歳時記 愛蔵版』 講談社
・稲畑汀子 『ホトトギス新歳時記 第三版』 三省堂
・茨木和生、宇多喜代子ほか 『新版 角川俳句大歳時記 秋』 KADOKAWA