【歳時記・夏】 時鳥 ほととぎす
見出し かな
〈傍題〉
杜鵑 ほととぎす/とけん ・ 子規 ほととぎす ・ 不如帰 ほととぎす ・ 蜀魂 ほととぎす ・ 杜魂 ほととぎす ・ 杜宇 ほととぎす/とう ・ 沓手鳥 くつてどり ・ 橘鳥 たちばなどり ・ 賤鳥 しずどり ・ 田長鳥 たおさどり ・ 妹背鳥 いもせどり ・ 卯月鳥 うづきどり ・ 初時鳥 はつほととぎす ・ 山時鳥 やまほととぎす ・ 名乗る時鳥 なのるほととぎす ・ 待つ時鳥 まつほととぎす
カッコウ目カッコウ科の鳥。連俳の五つの景物(雪、月、花、時鳥、紅葉)のひとつ。
初夏5月頃に南方より渡来して、8月から9月頃に南方へ渡る。
古来より人々は夏の訪れをしらせる初音に関心を寄せた。
初音・初声を待つとされるのは、鶯と時鳥だけ。
漢名も含めて異名が多い。
古くは「郭公」を「ほととぎす」と読ませることもあった。
鳴き声はこちらの動画を参照とさせていただく。
〈比較〉
〈例句〉
軽口にまかせてなけよほととぎす 西鶴
(かるくちに まかせてなけよ ほととぎす)
ほととぎす椴杉の葉の落つる時 才麿
(ほととぎす とどすぎのはの おつるとき)
野を横に馬牽むけよほととぎす 芭蕉
(のをよこに うまひきむけよ ほととぎす)
郭公声横たふや水の上 芭蕉
(ほととぎす こゑよこたふや みづのうへ)
有明の面おこすやほととぎす 其角
(ありあけの おもておこすや ほととぎす)
あの声で螈くらふかほととぎす 其角
(あのこゑで とかげくらふか ほととぎす)
蜀魂待つや柳の小くらがり 杉風
(ほととぎす まつややなぎの こくらがり)
峰越すか尻声はねて郭公 野坡
(みねこすか しりごゑはねて ほととぎす)
ものの音の水に入る夜やほととぎす 千代女
(もののねの みづにいるよや ほととぎす)
郭公一声夏をさだめけり 蓼太
(ほととぎす ひとこゑなつを さだめけり)
ほととぎす平安城を筋違に 蕪村
(ほととぎす へいあんじやうを すぢかひに)
山入の供仕れほととぎす 一茶
(やまいりの ともつかまつれ ほととぎす)
杉谷や山三方にほととぎす 子規
(すぎだにや やまさんばうに ほととぎす)
飛騨の生れ名はとうといふほととぎす 虚子
(ひだのあれ なはとうといふ ほととぎす)
手盛りして飯食ふ宿やほととぎす 露伴
(てもりして めしくふやどや ほととぎす)
ほととぎす鳴きて遠めく山の滝 蛇笏
(ほととぎす なきてとほめく やまのたき)
ほととぎす女はものの文秘めて かな女
(ほととぎす をんなはものの ふみひめて)
谺して山ほととぎすほしいまま 久女
(こだまして やまほととぎす ほしいまま)
ほととぎす山家も薔薇の垣を結ふ 茅舎
(ほととぎす やまがもばらの かきをゆふ)
ほととぎす痛恨つねに頭上より 草堂
(ほととぎす つうこんつねに づじやうより)
村人に微笑仏ありほととぎす 不死男
(むらびとに みせうぶつあり ほととぎす)
ほととぎす二児の父なる暁を啼く 草田男
(ほととぎす にじのちちなる あけをなく)
時鳥日蝕の天傾きて 楸邨
(ほととぎす につしよくのてん かたむきて)
ほととぎす新墾に火を走らする 多佳子
(ほととぎす にひはりにひを はしらする)
ほととぎす谷戸の朝靄突き放し 椿
(ほととぎす やとのあさもや つきはなし)
ほととぎす耳新しくなりにけり 欣一
(ほととぎす みみあたらしく なりにけり)
往くのみの戦のありし時鳥 通明
(ゆくのみの いくさのありし ほととぎす)
〈参考資料〉
・山本健吉 『山本健吉 基本季語五〇〇選』 講談社
・飯田龍太、稲畑汀子ほか 『カラー版 新日本大歳時記 愛蔵版』 講談社
・稲畑汀子 『ホトトギス新歳時記 第三版』 三省堂
・飯田蛇笏、富安風生ほか 『平凡社俳句歳時記 夏』 平凡社
・茨木和生、宇多喜代子ほか 『新版 角川俳句大歳時記 夏』 KADOKAWA