【歳時記・秋】 曼殊沙華 まんじゅしゃげ
曼殊沙華 まんじゅしゃげ
〈傍題〉
彼岸花 ひがんばな ・ 死人花 しびとばな ・ 天蓋花 てんがいばな ・ 幽霊花 ゆうれいばな ・ 三昧花 さんまいばな ・ 捨子花 すてごばな ・ したまがり ・ 狐花 きつねばな ・ まんじゅさげ
ヒガンバナ科ヒガンバナ属の多年草で、有毒草。曼殊沙華は、梵語で「赤い花」の意。秋の彼岸の頃に咲くため「彼岸花」の名がある。
〈例句〉
草川のそよりともせず曼殊沙華 蛇笏
(くさかはの そよりともせず まんじゆしやげ)
つきぬけて天上の紺曼殊沙華 誓子
(つきぬけて てんじやうのこん まんじゆしやげ)
曼殊沙華暗き太陽あるごとし みどり女
(まんじゆしやげ くらきたいやう あるごとし)
曼殊沙華抱くほどとれど母恋し 汀女
(まんじゆしやげ だくほどとれど ははこひし)
曼殊沙華落暉も蘂をひろげけり 草田男
(まんじゆしやげ らくきもしべを ひろげけり)
曼殊沙華散るや赤きに耐へかねて 朱鳥
(まんじゆしやげ ちるやあかきに たへかねて)
捨てきれぬものにふるさと曼殊沙華 真砂女
(すてきれぬ ものにふるさと まんじゆしやげ)
沼の精霊口より吐くは曼殊沙華 白虹
(ぬのすだま くちよりはくは まんじゆしやげ)
眼帯の内なる眼にも曼殊沙華 三鬼
(がんたいの うちなるめにも まんじゆしやげ)
曼殊沙華咲けば悲願のごとく折る 多佳子
(まんじゆしやげ さけばひぐわんの ごとくをる)
もの乞ひの唇赤し曼殊沙華 昌寿
(ものごひの くちびるあかし まんじゆしやげ)
曼殊沙華どれも腹出し秩父の子 兜太
(まんじゆしやげ どれもはらだし ちちぶのこ)
〈参考資料〉
・飯田龍太、稲畑汀子ほか 『カラー版 新日本大歳時記 愛蔵版』 講談社
・稲畑汀子 『ホトトギス新歳時記 第三版』 三省堂
・飯田蛇笏、富安風生ほか 『平凡社俳句歳時記 秋』 平凡社
・茨木和生、宇多喜代子ほか 『新版 角川俳句大歳時記 秋』 KADOKAWA