【歳時記・春】 梅 うめ

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梅の花の写真

梅 うめ

〈傍題〉

好文木 こうぶんぼく ・ 花の兄 はなのえ ・ 春告草 はるつげぐさ ・ 匂草 においぐさ(にほひぐさ) ・ 風待草 かぜまちぐさ ・ 初名草 はつなぐさ ・ 野梅 やばい ・ 白梅 はくばい ・ 臥竜梅 がりゅうばい/がりょうばい(ぐわりゆうばい/ぐわりようばい) ・ 青龍梅 せいりゅうばい ・ 残雪梅 ざんせつばい ・ 残月梅 ざんげつばい ・ 枝垂梅 しだれうめ ・ 飛梅 とびうめ ・ 鶯宿梅 おうしゅくばい(あうしゆくばい) ・ 箙の梅 えびらのうめ ・ 老梅 ろうばい(らうばい) ・ 梅が香 うめがか ・ 梅暦 うめごよみ ・ 梅園 ばいえん(ばいゑん) ・ 梅の宿 うめのやど ・ 梅の主 うめのあるじ ・ 梅林 ばいりん ・ 梅の里 うめのさと ・ 梅屋敷 うめやしき ・ 夜の梅 よるのうめ ・ 梅月夜 うめづきよ ・ 香散見草 かざみぐさ ・ 香栄草 かばえぐさ ・ 小梅 こうめ ・ 豊後梅 ぶんごうめ ・ 盆梅 ぼんばい  

バラ科サクラ属ウメ亜属の落葉樹。天神の神木とされている。
早春を代表する花で、その趣きや香りは古くから詩歌や画の題材とされ、桜とならび日本人に親しまれている。
五弁の白い一重咲きが多いが、八重咲きもある。
野梅は中国渡来の原種に近い白色五弁の花は野梅、鉢植えのものは盆梅とよばれる。
枝・幹が地を這う特性をもつ臥竜梅は、水戸光圀の命名といわれる。

〈比較〉

【歳時記・春】 紅梅 こうばい
【歳時記・春】 梅見 うめみ

【歳時記・冬】 探梅 たんばい

〈例句〉

山里は万歳遅し梅の花 芭蕉
(やまざとは まんざいおそし うめのはな)

梅が香にのつと日の出る山路かな 芭蕉
(うめがかに のつとひのでる やまぢかな)

梅散るや糸の光の日の匂ひ 土芳
(うめちるや いとのひかりの ひのにほひ)

梅一輪一輪ほどの暖かさ 嵐雪
(うめいちりん いちりんほどの あたたかさ)

しら梅に明くる夜ばかりとなりにけり 蕪村
(しらうめに あくるよばかりと なりにけり)

二もとの梅に遅速を愛すかな 蕪村
(ふたもとの うめにちそくを あいすかな)

燈を置ヵで人あるさまや梅が宿 蕪村
(ひをおかで ひとあるさまや うめがやど)

夜の梅寝ねんとすれば匂ふなり 白雄
(よるのうめ いねんとすれば にほふなり)

東より春は来ると植ゑし梅 虚子
(ひがしより はるはきたると うゑしうめ)

妓を拉す二重廻しや梅屋敷 漱石
(ぎをらつす にぢゆうまはしや うめやしき)

桔槹切れて梅ちる月夜哉 漱石
(はねつるべ きれてうめちる つきよかな)

古鏡見る窓梅のさかりなり 秋櫻子
(ふるかがみ みるまど うめのさかりなり)

白梅に憂ひをわかつ起居かな 碧童
(しらうめに うれひをわかつ たちゐかな)

山川のとどろく梅を手折るかな 蛇笏
(やまかはの とどろくうめを たをるかな)

梅一輪山を圧して咲けりけり 青邨
(うめいちりん やまをあつして さけりけり)

暮れそめてにはかに暮れぬ梅林 草城
(くれそめて にはかにくれぬ うめばやし)

朝露に梅は牛乳より濃かりけり 茅舎
(あさつゆに うめはちちより こかりけり)

勇気こそ地の塩なれや梅真白 草田男
(ゆうきこそ ちのしほなれや うめましろ)

梅林や人ちらばりてなきごとく 播水
(ばいりんや ひとちらばりて なきごとく)

梅白しまことに白く新しく 立子
(うめしろし まことにしろく あたらしく)

一輪にして梅が香のありにけり 年尾
(いちりんにして うめがかの ありにけり)

葬り処の梅白くして海暮れぬ 源義
(ほふりどの うめしろくして うみくれぬ)

男きて梅の白さに狼狽す 喜代子
(をとこきて うめのしろさに らうばいす)

風とどけくれる梅が香風が消す 汀子
(かぜとどけくれる うめがか かぜがけす)

〈参考資料〉

・山本健吉 『山本健吉 基本季語五〇〇選』 講談社
・飯田龍太、稲畑汀子ほか 『カラー版 新日本大歳時記 愛蔵版』 講談社
・稲畑汀子 『ホトトギス新歳時記 第三版』 三省堂
・飯田蛇笏、富安風生ほか 『平凡社俳句歳時記 春』 平凡社
・茨木和生、宇多喜代子ほか 『新版 俳句大歳時記 春』 KADOKAWA

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