【歳時記・夏】 蟬 せみ

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蟬 せみ

〈傍題〉

初蟬 はつぜみ ・ 蟬時雨 せみしぐれ ・ 唖蟬啞蟬 おしぜみ ・ 朝蟬 あさぜみ ・ 夕蟬 ゆうぜみ(ゆふぜみ) ・ 夜蟬 よぜみ ・ にいにい蟬 にいにいぜみ ・ 油蟬 あぶらぜみ/あぶら ・ みんみん蟬 みんみんぜみ ・ みんみん ・ 熊蟬 くまぜみ ・ 深山蟬 みやまぜみ ・ 蝦夷蟬 えぞぜみ ・ 姫春蟬 ひめはるぜみ ・ 蟬捕り せみとり ・ 蟬涼し せみすずし

鳴くのは雄で、雌は「唖蟬」。「蜩(ひぐらし)」と「法師蟬(ほうしぜみ)」は秋期。

〈比較〉

【歳時記・夏】 空蟬 うつせみ

【歳時記・秋】 法師蟬 ほうしぜみ(ほふしぜみ)
【歳時記・秋】 蜩 ひぐらし

〈例句〉

閑さや岩にしみ入る蟬の声 芭蕉
(しづかさや いはにしみいる せみのこゑ)

蟬の音も煮ゆるがごとき真昼かな 闌更
(せみのねも にゆるがごとき まひるかな)

はつ蟬の今這登る榎かな 闌更
(はつぜみの いまはひのぼる えのきかな)

鳴きやめて飛ぶ時蟬の見ゆるなり 子規
(なきやめて とぶときせみの みゆるなり)

蟬とんで木陰に入りし光かな 虚子
(せみとんで こかげにいりし ひかりかな)

蟬涼し足らぬねむりをねむりつぐ 秋櫻子
(せみすずし たらぬねむりを ねむりつぐ)

蟬の背の紺青にして樫の風 石鼎
(せみのせの こんじやうにして かしのかぜ)

蟬の声一度もきかぬ空なる みどり女
(せみのこゑ いちどもきかぬ うつろなる)

唖蟬も鳴く蟬ほどはゐるならむ 青邨
(おしぜみも なくせみほどは ゐるならむ)

石枕してわれ蟬か泣き時雨 茅舎
(いしまくら してわれせみか なきしぐれ)

子を殴ちしながき一瞬天の蟬 不死男
(こをうちし ながきいつしゆん てんのせみ)

身に貯へん全山の蟬の声 三鬼
(みにたくはへん ぜんざんの せみのこゑ)

聞くうちに蟬は頭蓋の内に居る 梵
(きくうちに せみはづかいの うちにゐる)

おいて来し子ほどに遠き蟬のあり 汀女
(おいてきし こほどにとほき せみのあり)

夜蟬ふと声落したる闇深し 年尾
(よぜみふと こゑおとしたる やみふかし)

しのび音の咽び音となり夜の蟬 鷹女
(しのびねの むせびねとなり よるのせみ)

天寿おほむね遠蟬の音に似たり 龍太
(てんじゆおほむね とおぜみの ねににたり)

鳴く蟬をへだてて熱きひかり降る 朱鳥
(なくせみを へだててあつき ひかりふる)

みんみんに合歓はねむりぬ千曲川 澄雄
(みんみんに ねむはねむりぬ ちくまがは)

死蟬をときをり落し蟬しぐれ 湘子
(しにぜみを ときをりおとし せみしぐれ)

蟬声を追ひ子のために生きる顔 湘子
(せみごゑを おひこのために いきるかほ)

森抜けしこと蟬時雨抜けてをり 汀子
(もりぬけしこと せみしぐれ ぬけてをり)

〈参考資料〉

・山本健吉 『山本健吉 基本季語五〇〇選』 講談社
・飯田龍太、稲畑汀子ほか 『カラー版 新日本大歳時記 愛蔵版』 講談社
・稲畑汀子 『ホトトギス新歳時記 第三版』 三省堂
・飯田蛇笏、富安風生ほか 『平凡社俳句歳時記 夏』 平凡社
・茨木和生、宇多喜代子ほか 『新版 角川俳句大歳時記 夏』 KADOKAWA

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